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日本平家物語協会

日本平家物語協会

荒山徹氏の紹介

荒山徹氏の紹介です。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用しました。

荒山 徹(あらやま とおる、男性、1961年 - )は、日本の小説家。

富山県生まれで現在は大阪府在住。上智大学卒業。新聞社、出版社勤務を経て作家となった。新聞記者二年目に在日コリアンの指紋押捺反対運動を取材したのがきっかけで大韓民国に興味を抱き独学で韓国語を学びはじめ、その熱が高じて留学した。その後、資料集めに日朝両国を行き来しながら二国間を舞台にした独創的な時代小説を野心的に執筆し続けており、今最も勢いのある伝奇作家として注目を集めている。
目次
1 作風
2 黄算哲
3 作品リスト
3.1 長編作品
3.2 短編集
3.3 アンソロジー収録
3.4 未刊行
4 外部リンク
作風
荒山徹は、山田風太郎や隆慶一郎といった奔放不羈な作風を持つ作家と比較されることがある。しかし彼の作風は、こうした先輩作家が守っていたタガをも逸脱することがしばしばあり、彼は彼であるとしか言いようがない独特の味を持っている。最大の特徴としては、韓国留学経験を生かした朝鮮史とのクロスオーバーであり朝鮮半島が出てこない作品は存在しない。実在の有名人の正体が「実は朝鮮人であった」というパターンも多く、こうした大胆な見方は読者にとって新たなイマジネーションと隣国への興味をかきたてる。また彼は五味康祐のファンであり柳生新陰流に対しても深い愛着があるようで、虚実ないまぜにしさまざまな柳生剣士をその作中にて生み出している。一方朝鮮半島からは、朝鮮妖術師、高麗忍者、朝鮮柳生らが登場し、妖術や剣術を駆使し、時には怪獣や大仏を使役して敵の行く手を阻む。 彼は作中で大胆なオマージュやパロディを行うことがあり、その範囲はロボットアニメ・漫画、怪獣映画、韓国ドラマと縦横無尽であり、タブーや常識など存在しないかの如くである。

彼のこのような個性の強さは、読むものを選び場合によっては嫌悪感を与え物議をもかもしかねないが、そんな欠点をも上回る魅力があると感じる熱心なファンが増えてきている。

黄算哲
『十兵衛両断』には、鶏林大・黄算哲教授『中国史としての高句麗日本史としての百済』鶏林大学紀要八十七号なる文献が登場するが、鶏林大学校も黄算哲なるも人物も実在しない。おそらく荒=コウ=黄、山=サン=算、徹=テツ=哲とひっかけた筆者のジョークであり、『魁!!男塾』における民明書房のようなものであろう。間違っても黄教授の文献を孫引きなどしてはならない。


作品リスト

長編作品
2006
『柳生雨月抄』
『処刑御使』
2005
『柳生薔薇剣』
2003
『十兵衛両断』(文庫版あり)
2002
『魔岩伝説』(文庫版あり)
2000
『魔風海峡―死闘!真田忍法団対高麗七忍衆』(文庫版上下巻あり)
1999
『高麗秘帖―朝鮮出兵異聞 李舜臣将軍を暗殺せよ』(文庫版あり)
短編集
2005
『サラン 哀しみを越えて』
アンソロジー収録
2005
『伝奇城』(短編『柳と燕 暴君最後の日』)
『片手の音 ’05年版ベスト・エッセイ集』(エッセイ『卒業―チョロップ』収録)
未刊行
『柳生百合剣』(長編、朝日新聞社『小説トリッパー』誌上で連載中)
『柳生大戦争』(長編、講談社『KENZAN!』誌上で連載中)
『朝鮮通信使いま肇(はじ)まる』(短編、文藝春秋『オール讀物』2007年5月号収録)
『対馬はおれのもの』(短編、祥伝社『小説NON』2007年5月号収録)
『怪異高麗大亀獣』(短編、祥伝社『小説NON』2007年4月号収録)
『鳳凰の黙示録』(長編、集英社『小説すばる』収録)
『密書「しのぶもじずり」』(短編、新潮社『小説新潮』2003年9月号収録)
『服部半蔵秘録 金髪くノ一絶頂作戦』(短編、新潮社『小説新潮』2003年5月号収録)

* 外部リンク
1.出版トピック【飛躍のひと 1】英雄でない人 描く歴史小説
 今年、それぞれの分野で活躍が期待されるのはどんな人たちか。才気あふれる俊英の横顔を紹介する。
荒山徹さん 山田風太郎ばりの伝奇小説で人気を博しているのが荒山徹さん(45)。新聞記者時代の指紋押捺(おうなつ)問題の取材をきっかけに韓国に関心を持ち、留学。朝鮮半島と日本の相克の歴史を背景に、新境地を切り開いてきた。最近は柳生一族の陰陽師、柳生友景(ともかげ)が朝鮮妖術師と戦う『柳生雨月抄』(新潮社)など柳生ものを多く送り出している。

 「作品に伝奇色を持ち込んだのは、歴史に関心の薄い今の読者が手に取りやすくするため。本当の狙いは、日本とコリアの密接な交渉史を知ってもらうこと」と話す。

 今後は、従来の戦国、江戸時代から、古代史などに幅を広げるつもりだ。「奈良時代より前の日本と半島は、中国文明の影響を受けた辺境として一つだった。いかに二つに分かれそれぞれの国ができたかを探りたい」と情熱を燃やす。
 信長、秀吉など英傑小説が主流だったこの分野で、気鋭の書き手は新たな時代とテーマを開拓しつつある。
(2007年1月9日 読売新聞)

2.気鋭新鋭荒山徹(あらやまとおる)さん 44(作家)
       [気鋭新鋭]荒山徹(あらやまとおる)さん 44(作家)
ずっと“一人韓流”だった
 長く密接な関係を持ちながら、日本人にはなじみの薄かった朝鮮半島の歴史。その面白さを伝える時代小説を孤軍奮闘で開拓してきた。
 「ずっと“一人韓流”だった。だから最近の韓国への関心の高まりはうれしいですね」と追い風を歓迎する。
 文禄慶長の役の名将、李舜臣(イスンシン)暗殺の陰謀を巡るデビュー作『高麗秘帖』(祥伝社文庫)を始め、日朝の交流史に奇想天外な剣術、忍法を絡め、血わき肉躍る物語を作り上げる。山田風太郎ばりの活劇は、大衆小説の王道だった時代伝奇ものを継ぐ本格派として評価が高い。
 韓国への関心は、読売新聞の記者時代、川崎で外国人指紋押なつ問題を取材したのがきっかけ。出版社勤務を経て「韓国関係のことを一生の仕事に」と、35歳で語学留学、1999年にデビューした。ソウルには「本の買い出し」にたびたび足を運び、ハングルの原史料を読めるのは大きな強みだ。
 最新作の短編集『サラン 哀(かな)しみを越えて』(文芸春秋)では、日本武将の妻となった朝鮮女性など、異郷で意地を貫いて生きる人々を、史実に沿って描き出した。侵略された側の悲劇だけでなく、過酷な身分制度など朝鮮内部の矛盾にも踏み込んだのは、「両国の関係がデリケートだからと歴史の実相から目を背けると、本当の溝は埋まらない」との信念があるからという。
 半島と日本の交流史を語る上で欠かせない中国史の勉強も始めている。「いつか、東アジア全体を視野に歴史小説を」と夢は広がる。(佐)
(2005年8月5日 読売新聞)

3.「韓国小説を開拓したい」
自著を語る(本の話より)
インタビュー「韓国小説を開拓したい」聞き手「本の話」編集部
――六篇の作品が収録された本書は『高麗秘帖』『魔風海峡』『魔岩伝説』『十兵衛両断』に続く荒山さん五冊目の著作となります。デビュー作の『高麗秘帖』から一貫して荒山さんは韓国・朝鮮半島と日本の関わりを描き続けておられますが、そもそも最初にその歴史に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか。
荒山 大学を卒業して新聞社に入り、二年目に川崎支局で在日外国人の指紋押捺反対運動を取材したのがきっかけです。
 取材を続けるうちに、知り合った人々のルーツである韓国と朝鮮の歴史、そして日本との関わりに興味が高まっていきました。それが出発点です。
――その後実際に韓国に留学もされていますね。
荒山 その国の歴史や文化を学ぶためにはまず言葉だと思って、会社勤めをしながら韓国語を勉強していました。でも、なかなか身につかない(笑)。ならばいっそのこと現地で勉強しようと考えて、思い切って留学しました。今でも資料集めや取材のため、韓国には年に二、三回は行きます。
――留学中から小説を書こうと考えていたのですか。
荒山 留学した当初は考えてもいませんでした。でも現地で歴史を勉強しているうちに、韓国では英雄として知られているけれど日本ではほとんど知られていない李舜臣(イスンシン、水軍を率いて秀吉の朝鮮出兵に抵抗した武将)に興味が集中してきて、何らかの形で書いてみたい、と考えるようになりました。
 新聞記者だったので、評伝やルポルタージュなどの形式でも、書けたとは思います。でも自分はそもそも、昔から五味康祐・角田喜久雄・柴田錬三郎などの娯楽小説を大量に読んで育ってきた人間なので、最終的に一番近しい表現形態である「小説」を選びました。そして書いたのが最初の作品『高麗秘帖』です。
――今回の単行本に収録された作品に共通する時代背景は、豊臣秀吉が朝鮮に出兵した文禄・慶長の役の前後です。物語にはその時期の李氏朝鮮が官僚で支配貴族階級の「両班(ヤンバン)」を中心とした厳格な身分制度社会であったことも描かれています。
 収録の「匠の風、翔ける」では沙器匠(さきしょう=陶工)や僧侶が差別の対象であったことも描かれていて、意外な内実に驚く読者も多いのではないでしょうか。
荒山 今まで知られていなかったこと、今でも知られていないことは多いと思います。韓国で集めた資料の中には、「どうして誰もこのことを日本で書いていないのか」と考えさせられるエピソードがまだまだありますし。それに日本にいると主にマスコミのふるいにかけられた韓国の情報しか伝わってきませんから……。
 だから逆に、今でも現地に行って思い知らされる韓国と日本の違いがとても新鮮ですね。海を隔てるだけでものの見方がこんなにも違うのかと、そのひとつひとつの違いに強いイマジネーションをかきたてられます。
――今回の作品には、当時の身分制度や武士社会の内実を細かく描くことによって、単純に韓国・朝鮮=善、日本=悪とはいえない状況がさまざまに設定されています。
 たとえば海を渡って朝鮮の武将の側室となり、父の仇の秀吉に憎しみの炎を燃やす日本女性「愛蓮(エリョン)」が登場する「耳塚賦」や、特権階級「両班」に夜毎陵辱された過去を持ちながら、日本の武将の妻となった朝鮮の女性「論介(ノンゲ)」が登場する「故郷忘じたく候」など……。
荒山 もしかしたら片方の国の歴史観だけを強く持つ方がこの作品集を読んだら、史観を「ひっくり返して書いた」と思われるかもしれません。
 でも日本と韓国のことを書くなら、特定の史観に寄り添うことなく、両国どちらの歴史も知っていなければなりません。それに作品を書くための資料は基本的に同じですから、そこから紡ぎだされた物語には表側も裏側もないと思います。
「光」でも「影」でもない、「対等」の物語として作品を読んでもらうのが本望。とにかくもっと読者に韓国に興味を持ってもらいたいですね。
――これから描いていきたいジャンルはありますか。
荒山 時代小説や歴史小説というジャンルがあるならば、「韓国小説」というジャンルを開拓していきたいですね。いずれは韓国だけが舞台になる小説も書いてみたい。これからも韓国とはずっとつきあっていくつもりです。


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